チームにトレーナーがいる意味 〜安心して競技ができる環境作り〜

スポンサーリンク

皆さんこんにちは
スポコネ編集長、ランニングシューズマイスターの石田佑也です

2019年の半分が終わり、下半期がスタートしましたね!
まだまだやることがたくさんありますが、時間を追うのではなく時間が私を追ってくるくらいの努力をしていかなきゃです。
上半期の締めとしてプレゼンターとして参加できたのはラッキーでした。

先日6月24日に行われた、スポーツコーチング・イニシアチブ様との合同プロジェクト

TEAM チームを成功に導くフォーメーション

今回のテーマは 今求められるトレーナーとは

このProjectBasedLearningは、プロフェッショナルがお互いに何を考えていて、何を目指しているのかを理解し、相互理解を深めていけるとより良いチームを作ることができるのでは?という仮説を立てて行っているプログラム

皆さん、トレーナーって聞くとどんな人をイメージしますか?

トレーニングを教える人、ストレッチやマッサージする人、テーピングする人

様々だと思います
実際世の中に存在するトレーナーと名のついたものはたくさんあります。
(アスレティックトレーナーをはじめ、コンディショニングトレーナー、メディカルトレーナーなど)

ではトレーナーとはチームにとってどんな影響を与える存在なのかをスポーツ現場で活動する3人のトレーナーの方にお話しいただきました。

トレーナーがいなくてもチームでしておくべきこと

スポーツ現場の安全についてわかりやすく講義してくださった一原さん

スポーツセーフティージャパンの一原克裕さんにスポーツ現場における怪我や事故を予防する環境についてお話しいただきました。

皆さんの活動しているスポーツ現場、本当に安全ですか?

冒頭のこの言葉がとても刺さりましたね
チームは勝つこと、楽しむことを目標に試行錯誤を重ねていきますが、何よりも大事なのは、安全に選手がプレーできる環境であること
これがないと最大限の力は発揮できません
しかし日本のスポーツチームにドクターやアスレティックトレーナーは十分な数がいません。
トレーナーがいなくても安全にできる環境を作ることがまず第一に考えること

sports-safety-japanより引用

アスレティックトレーナーはトレーニングよりもメディカル寄りなので、医療機関と選手、指導者との間(上の図の真ん中にいるような感じ)にいて選手、スタッフ、施設を円滑に繋いでいる。
トレーナーがいることでコーチは安心して戦略を考えることができます。
現場ではこれら3つのうちのどこかが欠落しているケースが多いので、トレーナーがいることでチームとしては安心ですよね。
ではこの3者がどんなアクションを起こすことで安全な環境にできるのか

sports-safety-japanより引用

〜 知る・備える・整える 〜
選手やチームスタッフがセミナーや講演を通してスポーツ現場の安全について知ってもらい、そして現場、施設にAEDなど物がしっかり備わっていること。
ここまではできているチームは多いですが、では実際になにかあったときに動けるシステムになっているのか。
実際に動くためのシミュレーションができていないケースはまだまだ多いそうです。
この「整える」という部分にフォーカスをおいて、何が起きても対応ができる体制が整っている状態をつくることが大事になります。

事故の原因のほとんどは「無知」と「無理」
指導者やスタッフが知らないということと、無理をさせてしまうということが大きな事故に繋がってしまうかもしれない。
そうさせないため、予測して回避するためにどんなアクションが必要なのかを考える必要が現場でチームに関わる人間全員にあります
指導者、選手、施設団体シーズン前に計画づくり、できていますか?

こんなワークをしました

このワーク、30秒で数字を1から順に見つけてもらうものだったのですが、最初はみんな探すのに必死
不安な表情でキョロキョロしていました。
これには法則があるのですが、それを知った上で探すと圧倒的に見つけるのが楽で、2回目はみんな不安なくドヤ顔でやられていました。
知ってる知らないで速度もメンタルも全然違います。
一定のルールがあることで誰しもパフォーマンスが上がる。
これが傷病者が出るなどの事故があったときで考えれば、対応の速度は雲泥の差でしょう。

最善を望み、最悪に備えるため、トレーナーがいないところで対応できる準備をプランニング、シミュレーションできていること。トレーナーがいたとしても、トレーナーが忙しいチームというのはあまり良くない。
極端に言えば体制が整っているチームはトレーナーが暇です。
(あれもこれも心配してトレーナーがキョロキョロしてたら不安ですよね・・・)

パフォーマンスなどを論ずる前にまずは安全であること
メジャーリーグやWBCでも活躍されたATCのお話は本当に説得力のあるものでした

トレーナーがいないと顕在化するリスク

2人目はスポコネ発起人の一人であり、サッカーチームにアスレティックトレーナーとして現場帯同している畠中陽介による怪我したあとの対応について

数多くのサッカー現場での経験や研究データから怪我の対処、予後について講義してくださった畠中さん

ケガをした時の対処法は皆さんご存知でしょうか?
そう、RICE処置です
Rest(安静) Ice(冷却) Compression(圧迫) Elevation(挙上)
やり方は知らなくても名前はなんとなく知っている方がほとんどでしょう

このRICE処置ですが、近年海外ではPRICEの方がいいんじゃないか(Protection 保護)POLICEの方がいいんじゃないか(Optimal Loading 最適な負荷)などと言われていますが、ただ安静にしていればいいというわけではないし、痛くなければ復帰していいというわけではない、このことは知っておいてほしいです。
まずは既存のRICE処置が確実にできることも大事ですよね。

〜安静はいいことばかりではなくデメリットもある〜
ベットレストによる筋力低下については、膝伸展筋力は1週間で約15%、20~35日間で約20%低下するというデータがあります。
「安静にしていて下さい」と言われ極端に全く動かず安静にしていると、抗重力筋は筋力低下や筋萎縮を引き起こしやすいので、過度な安静はデメリットも大きいです。
「Sitting is the new smoking」
スポーツから少し離れるかもしれませんが、座位行動時間の延長は生活習慣病の原因といわれ、不良姿勢を作ったり筋力低下、柔軟性低下を引き起こします。
これは現代社会だと多く見られることです。(特に社会人は・・・)

身体への刺激は絶対的に必要になるのですが、では実際にどれくらい負荷をかければいいのか?
チームにトレーナーがいないとなかなか個別にメニューを与えるのは難しいが現実
安全性を考えれば、中途半端にやらせるなら見学やサポートにさせたほうが良い
その選手が本当に最短で復帰するには、ある程度負荷をかけていかなければなりません。
ここにメディカルスタッフがどのように働きかけをしていくのかが大事になってきます。
治療院やクリニックのリハビリテーションスタッフは指導者のパーソナリティがわからないのでチームの状況を聴取した上で「じゃあこれくらいやれればいいかな」というくらいが限界
チームにトレーナーがついていればリアルタイムでチームの状況もわかるし、チーム全体で目指しているものや指導者のパーソナリティも理解できているので、より具体的なメニューを考えることができます。

まだまだ現場とのギャップがあり試行錯誤中ですが、「身体状況がこれくらいだから、この動きはできる」とかではなく、「サッカーはこういうものだから、そこから逆算してそれに必要なことをやろう」というリハビリのプロトコルとサッカーのプロトコルを同じレベルで考えるべきとのこと。
それにはトレーナーがしっかり競技について理解していること、そして指導者もトレーナーについて理解することが必要になってきます。

現場に立っているからこそ課題がたくさんある
このプロジェクトはそんな課題を共有するイベントなので、まさに今ディスカッションと相互理解が必要な内容でした。

トレーナーがいることによるメリット

最後が私スポコネ編集長の石田佑也がコンディショニングについて話させていただきました

コンディショニングの重要性を実際のプロ選手を例に出しながら講義した編集長石田

勝つためには何が必要か?

それは選手自身が自分の持っている力を最大限発揮することです!

そしてそのためには試合、練習においてもベストなコンディションでなければなりません。
選手は意外と自分の身体のコンディショニングを100%把握できません
パフォーマンスピラミッドにおいてもモビリティやスタビリティなどの機能的動作が最も基盤となりますが、この部分は特有のスキルの練習に繰り返し、日常生活、怪我の既往で癖がついてきたり、知らぬ間にコントロールできなくなっている動きが出てきます。
しかしこれは自分ではなかなか見つけたり気づくことが難しいです。
そのまま負荷の高い競技スキルの練習をしたり、試合に臨むと、慣れている動きと違った動きが伴った時に身体をコントロールすることができず関節や筋に負荷をかけ怪我をしてしまいます。
トレーナーは選手やコーチが気づけない部分に気づくことができます。
コーチとして選手に求めている動きを選手がしっかり応えられるようになるには、その動きに身体が応えられる(コントロールできる)フィジカルを作る必要があり、それがトレーナーの大きな役割の一つです

選手はどうしても競技スキルの練習やパフォーマンスの練習に行きがちです
なぜならそっちの方が楽しいし、機能的動作の練習は正直地味です
最近では上記のパフォーマンスピラミッドで言えば、競技スキルだけ強化しても上の青い部分だけが大きくなって不安定です。
機能的動作が大きければ大きいほど安定するので、その上のトレーニングの効果も飛躍的に上がりますし、怪我の確率が下がります。
例で言えば、つま先での立ち上がりが12秒以上、立位での土踏まずの高さが40mm以上、側臥位から胸を開いた時の肩から床までの距離12cm以下の3つの項目の内2つ以上クリアしているランナーの怪我の危険率0%というデータもあります。
選手にはこんなデータも見せながら機能的動作の必要性を感じてもらっています。

実際チームや選手から求められている理由として

・自分では癖を見つけられないから
・ちょっとした変化で化ける選手がいるから
・練習も本番もどんな動きもできる一番良い状態で臨みたいから

こんなお言葉を頂いています。
アスリートのパフォーマンスを向上させるには、鍛える前に整える(コンディショニング)が必要です。
選手が1分1秒ベストコンディションで競技に臨んでもらう
それをフィジカルから支えるのがトレーナーなのではないかと思います。

トレーナーは選手やチームの安心材料?

スポーツは安全に行える環境があり、何かあった時に正しい対応ができ、身体を整えてくれるトレーナーがいることで、安心して思い切ってやることができます。
まだまだ知られていないこと、先入観があったりするのも事実。トレーナーが一つ一つ丁寧に現場で選手やスタッフと接し、スポーツがより楽しくより安全により高いパフォーマンスで行われるように活動を続けていきたいです。
もちろんスタッフのコンディションも良くなければ選手のコンディションを良くすることなんてできないので、私もしっかりコンディショニングもしていきます!

コーチ、栄養士の方々にとっては少しでもトレーナーについて知ってもらう良い機会になったのではないでしょうか?
ご参加いただいた皆様ありがとうございました
次回は栄養士についてです!
詳細が分かり次第UP致します。
このプロジェクトに興味が少しでも湧いた方は是非次回遊びに来て下さいね

最後までお読みいただきありがとうございました
この記事が良かったなと思った方は是非シェアしていただけたら嬉しいです

スポンサーリンク

ABOUTこの記事をかいた人

理学療法士、トレーナー、インソール/ランニングシューズマイスター 自身の陸上競技経験とランニングシューズオタクの知識、理学療法士としての医学的知識を活かして、出張でのオーダーメイドインソールの作成やランニングシューズの選び方、履き方について指導。年間200足以上のインソール作成やセミナー講師など大きく活動の幅を拡大中。