箱根ランナーを襲ったぬけぬけ病は改善できる!? その症状、原因、対策を第一人者から聞いてみた!

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みなさんこんにちは
年々、お正月のニューイヤー駅伝や箱根駅伝の注目度が増してきて、選手の頑張る姿や躍動感に加え、履いているランニングシューズ、監督から飛び出す名台詞、影で支える栄養士やトレーナーの活躍など、陸上競技、駅伝の裾野が広がったように感じて個人的にとても嬉しいです。

しかし同時に思い出されるのが第94回箱根駅伝の復路、7区の選手が途中から急にフラフラした走りになった異変を覚えているだろうか。
当時の駒澤大学のエース・工藤有生選手は前半の途中から上半身が大きく揺れて道路を右に左に蛇行。左太ももを手で叩きながら懸命に足を進めていた。メディアでも何が起きているのかわからないという状態だった。
意地で7区を完走してタスキは繋がったが、駅伝名門である駒澤大学はこの年12位に終わり、翌年ののシード権を逃した。

私自身も勉強不足で、選手を襲ったこの異変について全くわかりませんでした
しかし、Twitterで日大陸上部出身で箱根駅伝出場経験を持つ俳優の和田正人さんのツイートを機にメディアやSNSを通してあの症状が「ぬけぬけ病」というものであるということがわかりました。

私自身もそうですが、まだまだ多くのセラピスト、トレーナー、指導者がこの症状について無知です。
私達が理解をしていなければ選手、ランナーはずっと改善しないままになります。
そこで、今回はぬけぬけ病についていち早く注目し、試行錯誤を経て多くの選手を復活へと導いたからだドック代表、理学療法士の西山祐二朗さんにお話を伺いました。

ぬけぬけ病治療の第一人者 理学療法士 西山祐二朗(にしやまゆうじろう)

1984年、宮崎県生まれ。からだドック代表。茂木病院デイケア室長。GTCテクニカルアドバイザ ー。リハビリドック管理人。麻生リハビリテーション専門学校(現大学校)卒。
09年福岡リハビリテー ション病院回復期病棟入職し、脳について数多くの知識と技術を学ぶ。
12年医療法人明和会茂木病院への入職をきっかけに予防事業としてからだドックを開始。プロ野球選手や元メジャーリーガーなどのスポーツ選手の身体調整に関わりながら、14年に初めてぬけぬけ病のランナーに出会う。そこからぬけぬけ病の専門理学療法士として活動する。
16年から東京、大阪、名古屋へ出張からだドックを開始し、多くのぬけぬけ病で悩んでいるランナーの身体を調整し改善へ導いている。トレーナーや理学療法士に向けてぬけぬけ病セミナーも開催し、ぬけぬけ病を一人でも多くの方に伝える為に活動中。

からだドックHPはこちら

ぬけぬけ病の症状とは?

石田佑也
よろしくお願いします
早速ですが、ぬけぬけ病について、改めてどんな症状なのかおしえていただけますでしょうか??
西山祐二朗
ぬけぬけ病は、「周期性ジストニア」という分類に入ると言われています。
周期性ということなので、繰り返しの動きをする職業(ピアニスト、ギタリストなど)に多いようです。
ジストニアは、無意識に力が勝手に持続的に入ってしまう状態。ということから考えていくと、長距離選手は長い時間繰り返し足を屈曲伸展させ続けることから、短距離選手ではなく長距離選手特有の症状になっていると考えられます。
選手本人の感覚で1番多いのは、「足に力が入らない」「踏ん張れない」という感覚です。この力の入らない感覚が1番選手を苦しめています。

ジストニアについてはこちらのページでわかりやすく説明されていたので御覧ください

ジストニアという病気は、筋肉の緊張の異常によって様々な不随意運動や肢位、姿勢の異常が生じる状態をいいます。ジストニアには、全身の筋肉が異常に動いてしまう全身性ジストニアと、局所のみの筋緊張の異常による局所ジストニアに大別されます。症状は筋肉の異常収縮によるものですが、筋緊張を調節している大脳基底核という部分の働きの異常によっておこると考えられています。原因のわからないものを本態性ジストニア、脳卒中や脳炎などの後遺症として起こるものを二次性ジストニアと呼びます。
書字や楽器演奏などきまった動作時だけ症状がでて動作が妨げられるものを、動作特異性ジストニアと呼び、書痙の多くがこれに含まれます。これらは特定の職種に生じる傾向があり職業性ジストニアとも言われています。

Neuroinfo Japan より引用

試行錯誤の繰り返しから見えてきた改善への糸口

石田佑也
今では恐らく日本で最も多くぬけぬけ病で悩んでいる方を救っている西山様が、この症状について試行錯誤を始めたきっかけはありますでしょうか?
西山祐二朗
4年前に初めてその症状で悩んでる実業団選手を診ました。
当時は何の情報も無かったので「抜け症」や「足抜け」「かっくん病」「ローリング病」などと、呼ばれ方も様々で、もちろんそれに関する文献なども全くない状態。でも、陸上長距離業界ではその症状が原因で引退される有名選手も沢山いるとのことでした。
そんな状態だったので、身体をくまなく評価して、選手の感覚を元に試行錯誤していきました。
かなりの回数と時間、お金がかかったのを覚えています。
それでも、完治して大会で優勝するという結果を出すことができたので、これは治らない症状ではないとその時から考えていました。
それから片足だけではなく両足抜ける選手もいたり知らないことばかりでしたが、きちんと身体を評価していくことで、共通点を見つけられるようになり、それからはやるべき事が見つかった!という感じで今に至ります。

ぬけぬけ病の原因とその兆候

石田佑也
原因不明の症状だっただけに、細かい評価から改善に導いた結果が出たというのは、多くのランナーにとっての希望になったと思います。
それらの評価から、ぬけぬけ病の原因と思われるものはどんなものが考えられますでしょうか??
西山祐二朗
1番は、痛みを我慢しながら走った結果だと思います。
ぬけぬけ病になる直前になんらかの怪我をしている選手がほとんどです。その怪我が改善したと思って走ってみると、「あれ?力が入らないぞ。」となるようです。
その状態で、いくら筋トレをしてもストレッチなどをしても改善しない選手ばかりだったのは、「間違った身体の使い方」でトレーニングをし続けているからです。
そこを一旦リセットしてあげることで、改善する選手がどんどん増えてきました。
石田佑也
間違った身体の使い方というのはなかなか自分自身では気付きにくいですよね・・・
ではランナーはどんな症状があった場合、まずどのような対応をとる必要があるでしょうか?
それがわかればランナーも対応しやすくなると思います!
西山祐二朗
  • 力が入らない感覚
  • 蹴れない感覚
  • 足がコントロールできない感覚
  • 勝手に足が回ってしまう感覚
  • 突っ張る感覚
  • 棒のようになる感覚

になった時は、とりあえずそれ以上走らないで一回止まってください。
一回止まるとまた走れるようになることが多いです。
そのように長距離の練習ではなく、細切れの練習を繰り返してください。
症状を出さない練習をしないとなかなか改善しないです。

石田佑也
無意識に力が入ってしまうというのは脳・神経系のコントロール不全や大脳皮質レベルの不活性なども考えられますでしょうか?
固有受容器の豊富な股関節が上手く機能せず、足の屈曲伸展動作の繰り返しに伴うアウターの筋収縮が継続されれば、徐々に求心位でのコントロールが難しくなってそれが癖になっていくことで「ぬけぬけ病」のような症状になっていくのではないかとも私としては考えているのですが、その点でなにかお考えはありますでしょうか?
西山祐二朗
2001年に出された研究で、
100回/分の高頻度の運動になると筋肉が弛緩する時間が足りずに血流量が減る(加賀谷淳子)
というのがあります。
有名選手のピッチを見てみると196.9や209といったピッチでした。
ピッチは両足ですので、片足では約100回の屈曲伸展が行われていることになります。
これにより、筋が弛緩できずに収縮しっぱなしの状態が作られる可能性が1つ。

また、神経生理学的に考えると、「加重」が起こってる可能性が1つ。
「あと少し」「あと1周」「あと半分」といったように選手の気持ちも少なからず関わってきています。その時に興奮状態へ切り替わり、脳からの指令がいつも以上に増えることで加重に繋がるのではないかと考えてます。
ですので、皮質レベルの不活性というより、その反対で、過活動の可能性が高いかなと。

ぬけぬけ病改善に必要なこととは??

石田佑也
症状を出さない練習や過活動を起こさないようにするには、選手だけでなく指導者も注意をしなければなりませんね
ランナー、治療者、指導者それぞれの立場でぬけぬけ病の改善には何が必要なのでしょうか?

西山祐二朗

そうですねぇ

ランナー側の必要なこと

症状を出さないこと
必要な筋力を正しい形で鍛えること(これがとても難しいです)
一旦今の感覚をリセットすること

治療者側の必要なこと

インナーマッスルを使えるような身体にすること
必要な筋を単独で鍛えること
不必要な筋の緊張を落とすこと

指導者側に必要なこと

選手の気持ちを理解すること
症状を知ること
見た目では分からないこともあるので、選手の訴えに耳を傾けること

が重要ですね!

石田佑也
ランナーや専門家としてはこの部分は自分のコンディションを見直す1つのチェックリストになるのでとても参考になると思います!
これまでぬけぬけ病で悩んでいるランナーを数多く診てきた西山さんの視点で、ぬけぬけ病になる選手のフィジカル的な特徴と、改善してきた選手の特徴などがあればお聞かせいただけませんか?
西山祐二朗
フィジカル的な特徴は、
腸腰筋と臀筋が全く使えてない。
遠心的な身体の使い方が間違っている。
ボディイメージと身体の不一致が起こっている。

改善してきた選手の特徴は、
自分自身の身体のことを理解している。
筋トレの負荷を目的とした筋に対してかけられる。
いろいろな筋トレを加えない。

ということかなと思います。
なによりも、みんな不安からいろんなことを試してしまいがちです。
それが1番良くないことのようです。
単純に臀筋と腸腰筋を正しい形で鍛えることが出来れば、ある程度までは改善していけます。

石田佑也
最後に、まだまだ認知が十分でないこのぬけぬけ病について、陸上競技に関わる指導者、コーチ、監督にどのようなことを伝えたいですか?
西山祐二朗
選手の訴えに耳を傾けることを1番伝えたいです。選手が感じている感覚は、嘘でもなく本当に感じている感覚です。本当に力が入らず、蹴れないんです。それでも頑張って蹴ろうとするから悪循環になる。
それをまずは知ってほしいと思います。ブログでも本でもなんでもいいので、とりあえずは知ることが最初かと思います。
石田佑也
今回のお話だけでなく、執筆された書籍やブログなどからも西山さんの強い思いが伝わりました
陸上競技に関わるトレーナー、理学療法士として、少しでも多くの人に伝えていきたいと思います
お忙しい中本当にありがとうございました!

陸上競技に関わる身として本当に勉強不足を痛感させられました
同時に、理学療法士が得意とする機能解剖学や運動学、神経学に基づいた細かい評価を行えば、ぬけぬけ病で悩むランナーの絶望を希望に変えることができるということがわかりました

陸上YouTuber「ランたなちゃんねる」のたなーさんもぬけぬけ病で苦しんだ?!

陸上YouTuberで人気のたなーさんもこの症状に悩まされ、様々な方法を試しても改善ができなかったそうです
この症状によって競技人生を諦めた選手もたくさんいたので、もっと早くから理解しておくべき問題でした・・・

書籍:「再走: あの時の走りをもう一度」

西山さんが執筆された、ぬけぬけ病改善のためのはじめての専門書

再走: あの時の走りをもう一度

書籍の紹介ページはこちら

ぬけぬけ病で悩む多くのランナーを救ってきたセラピストの言葉は本当に説得力があります
選手だけでなく、トレーナー、セラピスト、コーチや監督にも読んでいただきたい一冊です

紙の書籍はこちらから
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=240024612

改めて、西山さんありがとうございました!
私ももっともっと勉強していこうと思います
理学療法士 西山さんの情報はこちらからどうぞ!
ブログ:https://ameblo.jp/karada-dock/entry-12378787712.html
ツイッター:https://twitter.com/plusaseed

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ABOUTこの記事をかいた人

石田 佑也

理学療法士、トレーナー、インソール/ランニングシューズマイスター 自身の陸上競技経験とランニングシューズオタクの知識、理学療法士としての医学的知識を活かして、出張でのオーダーメイドインソールの作成やランニングシューズの選び方、履き方について指導。年間200足以上のインソール作成やセミナー講師など大きく活動の幅を拡大中。